フリーアートと上岡誠二氏 [アート論]
上岡誠二さんとお会いした。
一昨日、私のアトリエに来て下さったのが、
初対面でした。
もともとはawという美術系のメーリングリストで書いておられて、
私のライブドローイングなどの画像は記事を見て、
興味を持って下さった。
上岡さんは、東京 F.A.T.を立ち上げておられて、
フリーアートの問題を提起しておられる
芸術活動家でいらっしゃる。
拙著『彦坂尚嘉のエクリチュール』に収録している、
自作鑑賞を論じた文章でも書いているのだが、
芸術の基本は、無償性にあるのです。
商業性と、芸術性は、実は矛盾を生じる。
無償の行為、しかも自分で自分の作品を鑑賞するという
その中でしか、実は美術史は立ち現れないのです。
そのことが美術の生物学の研究からは導きだせるのです。
ですからフリーアートというのは、
重要な視点で、
アメリカの、特に西海岸のアートムーブメントには、
このヒッピー性を含んだフリーアート系の思想が
濃厚にあります。
私自身は、刀根康尚氏に師事したこともあって、
最初からフルクサス系のイベントの流れを生きて来ています。
作品を売ろうとする気体分子ギャラリーというものと、
フリーアートを展開する志向とは、
一見は反対の様で、矛盾しているのです。
しかし、
そうではなくて、芸術を成立させようとする根としては、
実は同根なのです。
この辺を、上岡さんとの交流で、
膨らませられればと思います。
東京F.A.T.の紹介、ありがとうございます!
芸術は無償の贈与であるべきはずなのに、その仕組みが出来ていないなと考えはじめた頃に「フリーソフトウェア」を知ったのですが、なんでこれを芸術家が出来なかったのか、口惜しくて仕方ありませんでした。
また、アトリエにお邪魔させて下さい。とにかく楽しかったです!
by 上岡誠二 (2009-06-06 20:32)
上岡誠二様
コメントありがとうございます。
芸術の中に有る無償制は本質的なもので、かならずしも無料にするだけで保証できるものではありませんが、フリーアートというのは、面白い主張ではあります。
反対から見ると、実は美術史と言うのは、ほぼ完全に職業美術家によって作られていて、アマチュアは、ほぼいないのです。このことの本質的な意味も重要です。アマチュア主義そのものは、実は報酬を求めている行為なのです。
こうした視点に立ちつつも、フリーアートに興味を持ちました。
by ヒコ (2009-06-08 07:15)
はい。美術史は職業美術家の歴史そのもので、金と権力にまみれながら作家がどのようにしてそれらを利用したり、反抗したりしながら、芸術を続けていったかという、ドキュメントなんだと思います。それはまだまだ続いていくものでしょう。フリーアートによって、それとは違った歴史を発掘したり、新しい歴史を作ったりすることができるのではないかという可能性を感じつつそこに参戦しています。
by 上岡誠二 (2009-06-08 10:12)
上岡誠二様
まさにおっしゃる通りだと思います。それに「フリーソフトウェア」に象徴される思想は、情報化社会のありようを特徴づける近代資本主義を否定する側面を現しています。
情報化社会の中にあるこの近代資本主義を否定し解体しようとする潮流は、アートの中にも出現するのは当然であって、そう言う意味でフフリーアートの追求は、面白い可能性を持っていると思います。
by ヒコ (2009-06-09 06:12)
彦坂さま
はい。フリーソフトウェアはハッカーたちが作りました。ハッカーとは権威や権力に押し付けられた情報に関わるルールを変える可能性をもつ人たちのことです。すべてを情報化し、そのルールを変革することで革命の可能性は広がっています。現代、そして近未来の革命家とは、きっとハッカー達なんだと思います。でもその革命は既存の権威を倒すものではありますが、みんなを幸せにするものなのかどうかは分かりません。WindowsやMac OS、それらを動かすハードウェアはほんの一部のハッカー達によって独占され作られ売られていることを考えれば、その危険性は明白です。新自由主義なんてのも同じ場所から生まてきたんだと思います。なんだかこれまでの美術史と似た感じになってきました。だからこそフリーソフトウェア、そしてフリーアートは追求しなくてはならないものだと、、、。
by 上岡誠二 (2009-06-09 16:05)