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美術作家の欲望のちがい(加筆1) [生きる方法]

 
人はそれぞれ、違った欲望を持って生きています。
そのことを知っている、当たり前のつもりが、
実際は、私はそのことを良く知らなかったという事を、
知ったのが、今回の日本ラカン協会の大会でした。

経験としては知っていても、
理論として把握できるかどうかで、違うのですね。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

朝5時半起きで、日本ラカン協会第9回大会に行って来ました。
9時からの研究発表を聞くためです。

ですので8時15分に会場について、開催の準備に参加しました。

一応、日本ラカン協会の幹事ですので、そういう準備の作業も
参加するのです。



 日本ラカン協会第9回大会プログラム

 日時:2009年12月6日(日) 09:00~17:30
 場所:専 修大学神田校舎7号館731教室(3F)
     (〒101-8425 東京都千代田区神田神保 町3-8)
 交通: 営団地下鉄・神保町駅 徒歩3分
 
大会参加費 : 無料

私自身は、学問というものが好きです。
何が好き家と言えば、蓄積がきくからです。
知識や理論が蓄積して成熟してく事が可能なのです。

こういう学会発表も好きです。

若い研究者の発表に、学ぶものがあるのです。

この日の3つの研究発表は、大変に刺激的なものでした。

今日、一番学んだ事は、欲望の問題です。

人によって、欲望が違うのですが、
欲望そのものの消失の問題がまず、最初に私の興味を引きました。

アーティストでも、制作の意欲の消える人や、
あるいは何を作ったら良いか分からなくなる人を、
何人も見て来ているのですが、
こういう人の問題です。


 
 1. 研究発表 09:00~11:45  (発表時間30分、質疑応答15分)

 09:00-09:45  石崎 恵子 (お茶の水女子大学大学院博士課程)

「精神分析における『絶対的差異』
       ――西田哲学との対比において」
司会: 伊吹 克己(専修大学)

概要:

ラカンが精神分析の立場として提示した「絶対的差異を得る欲望」とは、
S /対象a」及び「la Loi/les lois」における差異を求めるもので
あるが、この差異を別の角度から「一般/個物」「道徳/宗教」の相違
として捉えていたと考えられる西田幾多郎の説と の対比において、
その分岐点から浮き彫りとなる差異の諸相と、日本におけるその
可能性を探りたい。


石崎恵子さんの発表は、《絶対的な差異》の問題です。

ラカンと西田幾多郎を比較しながらの発表は、
なかなかむずかしいものでした。

《絶対的な差異》とは何か?
彦坂尚嘉的に、分かりやすく要約すれば、それは押井守の
甲殻機動隊に出てくるゴーストの問題です。

人間が自閉するのではなく、自開して行った場合には、
個人は、もはや外部に開かれた情報の交差点であって、
情報網の中にとけ込んで行ってしまいます。

この時に、自分が自分である最小限の差異が、
《絶対的な差異》であり、ゴーストなのです。

彦坂尚嘉の芸術論の根拠は、このゴーストに依拠する
表現を芸術としている事です 

学問が蓄積が出来ると書きましたが、
ゴーストと言う私性は、蓄積がきくのです。
公共性のあるデザインは消費されるのですが、
私性を帯びた芸術作品は、
時間を超えて人に感銘を与える蓄積性があるのです。
このことを今日の多くの人が忘れているのです。


 10:00-10:45  太田 和彦 (東京農工大学農学府)
「宮澤賢治と『師』の機能――『セミネールⅡ:自我』を中心に――」
司会: 福田 肇(フランス・レンヌ第一大学哲学科博士課程)

概要:詩人・宮澤賢治(1987-1936)の心象スケッチ作品には、
ほぼ必ずそれぞれの作成 年月日が記されている。
しかし第三集に収録されている作品1020「野の師父」には、
例外的に草稿を含めてその作成年月日が記されていない――。
これを きっかけとして、賢治の詩作・推敲における「師」の機能を、
ラカンが『セミネールⅡ:自我』で行った「教える者への問い」を主に
参照しつつ考察する。そし て、〈賢治はなぜ推敲し続けたのか?〉
という前回ワークショップからの疑問に、別の視角からの回答を試みる。

太田 和彦さんの発表は、宮沢賢治自身が行っていた
心理学的な探究を問題にし、
興味深いものでした。
宮沢賢次は想像以上に面白い重要な文学者
であったのです。
【続きは下記をクリックして下さい】


11:00-11:45  柵瀬 宏平 (東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
「ラカンによる『ハムレット』読解をめぐって」
司会: 原 和之(東京大学)

要:シェイクスピアの『ハムレット』は、フロイト以来、
精神分析において、エディプス・コン プレックスについて考えるための
重要な参照項であった。1959 年、エディプス・コンプレックス概念の
再構築という作業をひとまず終えたラカンは、この戯曲の読解に着手す
る。本発表は、ラカンによる『ハムレット』論を 分析することで、
ラカンによるエディプス・コンプレックス再解釈の内実を検討するとと
もに、この悲劇の読解を通じてラカンが練り上げた「欲望」概念がいか
 なるものであったかを明らかにすることを企図する。

柵柵瀬 宏平さんの発表が、私には直接勉強になりました。

これも彦坂尚嘉的な解釈ですが、
禁止や否定を媒介しない解放的な表現というのは、
欲望そのものの消失に帰結するのです。

欲望そのものを限定し、規制しないと、
欲望は消えるのです。
1980年代の作家の多くが消えているのは、
《想像界》への解放を喜ぶ意識の中で生み出されたから
なのだろうと、思います。

つまり私が見て来た作家の中には、制作する意欲を
失ったり、何を作ったら良いか分からなくなった人が
ありますが、こういう人たちの欲望のありようが、
少しですが分かるようになりました。

直接には愛の問題なのですが、
人間は《他者の欲望》を欲望する事で、関係を結びます。

私との関係が切れて行った人たちや作家たちは、
私の美術に対する欲望を、共有する事ができなかった
のです。

私の美術に対する欲望は、
個人的にも、社会的にも歴史的と言うか、
美術史に参入して展開されるものなのです。

そういう私の欲望を、多くの過去の友人や作家が、
共有できないと言うか、
拒否していったのだという事に思い至りました。

美術作家と言っても、その欲望は、様々なのです。

このことについて私は、あまりにも大雑把であったと
反省しているのです。

気体分子ギャラリーというのは、作家が集まって
経営するギャラリーで、かつての美術家共闘会議の
焼き直しなのですが、こういう私の欲望を、
自らの欲望として引き受けられない人は、
当然のように去って行くのです。

去る者は追わず、来るものは拒まず、という原則で、
やってきたのですが、
ここにあるのは、欲望の交差であり、共有部分の形成
なのです。

それが出来なければ、お互いに去った方が良いのです。

どちらにしろ、最大で7人の作家を売る小さなギャラ
リーです。

活動期間も、まずは2010年〜2015年です。
これで生き残れれば、後5年。
5+5で、10年できれば、あと惰性で10年付録で
活動が出来るというものです。

そういう活動も、来年からの不況の激化の中で、
本当に厳しいサバイバル戦争なのです。

今日学んだ事の、欲望の多様性と差異と複雑さは、
今までの多くの疑問を氷解させるものでした。

10人中8人の人は、彦坂尚嘉的に観察してみる限り
《想像界》だけの人で、《第6次元 自然領域》に生きて
います。
この多数派と向かい合う時には、
この人々の欲望を模倣して、同じように《想像界》で見て、
《第6次元 自然領域》で思考する必要があるのです。
このことに、最近決断が着きました。

戦争と同じ手法です。向こうが機関銃を撃ってくれば、
こちらも機関銃を撃つという事です。



2. 昼休み 12:00~13:00

 3. 総会  13:00~14:00
① 議長選出
② 会務報告… 論集刊行に関する報告など
③ 決算(2008/2009年度)審議
④ 予算(2009/2010年度)審議
⑤ 次年度活動計画について

 4. シンポジウム 14:30~17:30

〈 「いじめ」が終わるとき-変動する社会と精神分析 〉

企画・司会 : 磯村 大 (地精会 金杉クリニック)

  提題者 : 芹沢 俊介 (評論家)
    「いじめの定義とその力動」

  提題者 : 川崎 惣一 (北海道教育大学)
    「いじめの構造分析  中間集団における享楽」

  提題者 : 赤坂 和哉 (臨床心理士)
    「いじめの幻想的側面について」

      ※…第9回大会シンポジウム資料(PDFファイル109KB)

 5. 懇親会(会費:5,000円) 18:00~

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コメント 1

丈

芹沢俊介さんが出ておられたので少し驚きました。吉本隆明の「試行」でデビューした論客で「対幻想」の概念を元に家族論を展開して、現代社会をどう捉えるか探究してきた方と理解していますが、ラカンとの関わりは興味深いです。

by (2009-12-09 01:27) 

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