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2000年代日本現代アート論 越後妻有トリエンナーレを巡って(2) [アート論]

3.『越後妻有トリエンナーレの中の名品を求めて巡るツアー

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 今回、参加者20人で3泊4日の『越後妻有トリエンナーレ『大地の芸術祭』の中の名品を求めて巡るツアー』を組織して、コディネートして来たので、そのツアーと、その前の下見の中で見た作品を、ご報告したいと思います。このツアー自体は、建築を見るツアーとして何回も繰り返されて来ていて、前回の2006年にも行われています。

 今回の企画者の彦坂尚嘉自身が、2つの場所での作品を越後妻有トリエンナーレに出品しているので、自分自身の作品を見せるという我田引水の意図は、明確にあるのです。中立的な記事を読む事を求める読者には不快なことかもしれませんが、現実であり事実ですので、事前にお断りをしておきます。

 なおこのツアーは、アートスタディーズという勉強会と、建築系ラジオの共同主催のものです。建築史/建築評論家の五十嵐太郎、建築家の山田幸司、松田達などの建築系の人々と、彦坂尚嘉、飯田啓子、秋元珠江、田嶋奈保子などのアーティスト、そしてギャラリストの玉田俊雄(タマダプロジェクト主宰)、さらに美術研究者やコレクター、学生、が参加しました。さらに田邊寛子や、木村静のような街起こしなのど地域市民運動をやっている人々も参加しています。

 『名品を求めて巡るツアー』と名付けているのは、今こそ、感覚を研ぎ澄まし、自分の身体や脳や、自らの人格と教養の蓄積をかけた全身で感じることが重要だからです。

 世間一般やマスコミを通じて空気や風聞として押し出されてくるお仕着せのアートではなく、自らの判断基準をもったアートを体感する意味で、ここで紹介する作品と向かい合いました。

 宣伝記事と提灯記事しか書かない美術批評家や職業的なアートライターの多くを無視して、彦坂尚嘉は自らの言葉で作品を批評する行為を、孤立して非営利的執筆としてブログーを実践してきているからです。スペクタクル化に脅かされない、裸の王様化されない芸術鑑賞に挑戦をして行きたいと思います。とは言っても、彦坂尚嘉が彦坂尚嘉の作品を紹介し、説明する記事の部分では、当然のように中立性を求める読者の不審や疑念を呼ぶ記事となりますので、批判的に読んでいただくことをお願い致します。私自身に対する正統な批判には、正面から誠実に向き合いたいと思います。


   4.山本想太郎と彦坂尚嘉の2つのフロアイベント      


 今回の越後妻有トリエンナーレ名品ツアーで見た作品の中で、秀作をあげるとすると、先ずに山本想太郎の建具を使ったフロアーイベントとも言うべき作品だろうと思います。次に紹介する彦坂尚嘉の間伐材をつかったフロアイベントと、床にものを敷くということで良く似た構造なのです。

 山本想太郎氏は、1966年生まれの建築家で、早稲田大学理工学研究科(建築専攻)修士課程

修了して坂倉建築研究所を経て、独立して山本想太郎設計アトリエを主宰している建築家です。

今村創平、南泰裕らとともに建築家ネットワーック・プロスペクターをつくって活動して、前回の2006年には、このプロスペクターの作品として「コンタクト-足湯プロジェ」を 

松之山湯田温泉「ゆのしま」敷地内に、アート作品としてつくっています。
私も見ています。

 

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プロスペクター作品の芸術分析

《第6次元 自然領域》のデザイン的エンターテイメント作品

《想像界》の表現
気体表現(=近代)

《気晴らしアート》
《ローアート》

シニフィアン(記号表現)の美術
透視立体》
【A級美術】


 今回は、グループではなくて、一人で制作した作品です。

タバコの葉を乾燥させる倉庫として使われていた建物の内部に、庭のように歩く空間を作っています。

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山本想太郎           撮影:木村 静

 前回の足湯プロジェクトで使った白く塗られた越後妻有全域から集められた木製建具約150 枚が用いられて、訪れた人は、建具の障子紙やガラスが無くなった穴の部分に足を入れて、この庭を散策しするのです。上部の空間には空中に浮遊する、建具でできた3 つの筒があって、上部から外光が入っています。
 繊細で、大胆で、そして建具の敷かれた床を歩くという作品で、新鮮で感銘を受けました。
この山本想太郎の作品は、先に紹介した杉浦久子のような
デザイン的エンターテイメント作品ではなくて、《真性の芸術》になっている作品です。
このこと故に、高く評価したいと思います。

山本想太郎2.jpg
山本想太郎                 撮影:木村静

山本想太郎作品の芸術分析

《第1次元〜第31次元》の多次元的な《真性の芸術》
  ただし《超次元》と《第41次元》が無い。

《想像界》《象徴界》《現実界》の3界をもつ重層的な表現
気体/液体/固体/絶対零度の4様態をもつ多層的な表現

《シリアス・アート》《ハイアート》

シニフィアン(記号表現)の美術、ただしシニフィエ(記号内容)性が無い。
透視立体》【A級美術】

 

山本想太郎の越後妻有トリエンナーレへの取り組みは、

これだけではなくて「妻有田中文男文庫」(作品番号10  2009年作品) 

さらに、「安堀雄文記念館」(作品番号10  2006年作品)

「再構築」(作品番号31  2006年作品)、

「名ヶ山写真館」(作品番号36  2006年作品)と、

全部で5つもあるのです。

この精力的な活動の熱意が背景になって、今回の傑作が生まれたと思います。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

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彦坂尚嘉フロアイベント2009        撮影:武田友孝

 

さて、この山本想太郎の作品に呼応するかのように、建築の床面を、

あたかも外部の庭であるかのように反転させて、廃屋を芸術作品に

変貌させたのが彦坂尚嘉のフロアイベント2009(作品番号22)でした。

彦坂尚嘉は1946年うまれの美術家で、1970年多摩美術大学油彩科中退。

1969年に多摩美術大学の学園紛争のバリケードの中の造型作家同盟展という美術展でデビューしたアーティストです。そのときに出品したフロアイベントとウッドペインティングを、40年後の現在も展開し続けて継続制作しているという作家です。

今回の越後妻有トリエンナーレでは、田麦(作品番号22)という山村の廃屋ではフロアイベントの作品を展示し、もう一つ手塚貴晴のリノベーションしたイタリア・レストラン「黎の家」(作品番号229)の方には、ウッドペインティングの小品を5点展示しています。

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        彦坂尚嘉 ウッドペインティング・シリーズ2009    撮影:木村静

 

 一方でブロガーを名乗って『彦坂尚嘉の《第41次元》アート』(http://hikosaka2.blog.so-net.ne.jp/)という辛口のブログを日々更新し続けていて、クリック総数は126万5000に至っています(2000年8月15日現在) 


  前回2006年では、同じ田麦の廃屋で、自分の家である彦坂家の歴史をテーマにしたフロアイベントを展開しています。彦坂家は、宇都宮藩の家老の家で、幕末の宇都宮戦争で壊滅している家系なのです。この時は山本想太郎さんと同じように気派というグループで制作していました。
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彦坂尚嘉フロアイベント2006       撮影:後藤充



 さて、今回の展示では、一転して、間伐材をつかった作品になっています。

間伐材.jpg

                     撮影;武田友孝

 

今回は、グループではなくて、一人で制作した作品です。
200年は経つ古い農家の内部に、庭のように歩く空間を作っています。
津南の山奥に切り倒されて放置されている樹齢20から30年の間伐材を
輪切りにして約1000個、床に敷いているのです。
間伐材の上を歩くのは汚れと危険さで無理なので、
床には中央にレンガと砂利で歩道が作ってあります。
観客は、この庭を散策して、反対の出口から出て、今度は両側に開いた壁を失った空間を透して向こう側の茄子畑を、見ると言う借景の作品です。
外壁には絵が描かれていて、廃屋ペインティングになっています。
家の内部にも『ペンキ絵』が描かれていて、さらに「木に竹を継ぐ」という言葉と、
「人は木竹石にあらず」という文字が書いてあります。
産業社会と情報化社会の連続性の齟齬と、そして派遣切りに象徴される事態を、
間伐材と言う人工的な淘汰の悲惨さに重ねた作品であります。
この彦坂尚嘉の作品も、山本想太郎の作品同様に,
デザイン的エンターテイメント作品ではなくて、
《真性の芸術》になっている作品です。

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彦坂尚嘉作品の芸術分析

《超次元〜第41次元》の多次元的な《真性の芸術》

《想像界》《象徴界》《現実界》の3界をもつ重層的な表現
気体/液体/固体/絶対零度の4様態をもつ多層的な表現

《シリアス・アート》と《気晴らしアート》の同時表示
《ハイアート》と《ローアート》の同時表示
《芸術》と《反芸術》の同時表示
シニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号内容)の同時表示
透視立体》【A級美術】

 
彦坂尚嘉の越後妻有トリエンナーレの取り組みは、これだけでなくて、
すでに述べたように、
イタリア・レストラン「黎の家」(作品番号229)の方には、
ウッドペインティングの小品を5点展示しています。

DSC04474.JPG.jpeg
彦坂尚嘉作品の芸術分析

《超次元〜第41次元》の多次元的な《真性の芸術》

《想像界》《象徴界》《現実界》の3界をもつ重層的な表現
気体/液体/固体/絶対零度の4様態をもつ多層的な表現

《シリアス・アート》
《ハイアート》

シニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号内容)の同時表示
透視画面》オプティカル・イリュージョン【A級美術】




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