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ツアー終了報告 [アート論]

越後妻有トリエンナーレツアーから、昨晩遅くに帰ってきました。

参加者は20名。

3泊4日の長期間旅行でしたが、

充実したツアーでした。

事故もなく無事に終了できて良かったです。

今回3泊4日の私のツアーがまわって見た中で、ひどい作品でがっかりした作家としては大杉哲也+伊藤友隆「みんなのこたつ」、小川次郎の新作「みらい」(作品番号25) でした。これについては、重要な問題があるようなので、後で論じます。

力作という新作は、山本想太郎の「家具ノニワ」(作品番号119/《第1次元》社会的理性領域)、我田引水で恐縮ですが彦坂尚嘉の「フロアイベント2009」(作品番号22/《超次元 名品領域》)でした。

佳作としては杉浦久子の「雪ノウチ」(作品番号47/《第6次元》の自然領域)、加治瑞穂「White hole」(作品番号19/《第6次元》の自然領域)、アンティエ・グメルス「内なる旅」(作品番号194/《第8次元》の信仰領域)、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー「ストーム・ルーム」(作品番号28/《第8次元》の信仰領域)、

過去作品の傑作としては、リチャード・ウイルソン(作品番号122/《超次元 名品領域》)、アン・グラハム(作品番号138/《超次元 名品領域》)、ノイシュタット(作品番号181/《超次元 名品領域》)、オル・オギュイ(作品番号110/《超次元 名品領域》)、ベたほりつこ(作品番号61/《第1次元 社会的理性領域》)などでした。

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最初の宿泊場所の三省ハウスは、ネット環境があったのですが、

2泊目の銀河荘にも、3泊目の秋山郷にもネット環境は無くて、

ブログもメールチェックもッ出来ませんでした。

僻地であるのは確かですが、

地方の活性化の基本は、ネット整備なのですが、

それが出来ていないのです。

日本社会は、現在の情報革命の歴史的な意味を理解できていないのです。


新潟の地は、道路網は驚くほどに完備していて、大きなトンネルがたくさん造られていて、

この道路網が地域の地政学的な意味を変容させて、その結果として若者の都会への流出を

生み出し、さらに少子化が追い打ちをかけて、地方の衰退と崩壊を生みださいています。

そして同時にこの道路網の完備が、越後妻有トリエンナーレを成立させている基盤なのです。

現在の地方の衰弱を乗り切るためには、実はこの道路整備網の上に、

インタネット環境と携帯電話の通信網を整備して、

情報革命の参画する事が、もう一度人々を地方に呼び戻すための大きな設備投資たりえるものなのです。


越後妻有トリエンナーレを2000年代10年間で終わらせるのか、

それとも2010年代にバージョンアップして継続できるのかを分ける大きな認識点は、

この情報社会への視点なのです。

この当たり前の事が、実は当たり前に推進されていないところが、

日本が遅れて来ている重要な原因があるのです。

 

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今年2009年の越後妻有トリエンナーレは、第4回です。

2000年に始まったという、文字通りの21世紀の初頭の10年間をかざる美術展がこの大地の芸術祭でありました。

2000年代というのは、越後妻有トリエンナーレの時代であったのです。私自身は、この第一回から参加してきただけに、感慨深くこの10年を振り替えざるをえません。

この第4回という2000年代の最後の越後妻有トリエンナーレは、

総合ディレクターの北川フラム氏の天才とも見える大規模な企画力で、

広大な大地での美術展の成熟と完成を示していました。

全体を見ることが出来ないと言う過剰性は第一回からあったのですが、それは第4回では、総数370点となり、飽和点を示す段階までに達しています。もはや誰も全体を把握できないというものになっているのです。


さらに北川氏が推し進めてきた住民参加と、妻有様式ともいうべきオールオーバー構造の作品の多発も、頂点を迎えていました。作家名がちがっても、ほとんど同一構造の作品があって、マンネリ感をあたえるようになっています。その代表は、今回の目玉作家のアントニー・ゴームリー(作品番号23)と塩田千春(作品番号232)、松澤有子(作品番号17)が、廃屋に糸を引っ張った同一性の高い作品になっている事です。

かつては中心部は凡庸な作品が多くても、大自然のなか、はるか僻地で展示されている作品は力作が多かったと

いう印象は、過去のものになって、かなりの遠隔地まで歩いて凡庸な作品を見ると言う結果になっていることも、

今回は多くなっています。代表的なのは、美しいブナ林の中に白い椅子のブランコを置いたメルヘン作品の福屋粧子の作品でした。台風の豪雨の中、山道を40分も歩いて見たという私たちの体験の特異性もあったのですが、制作物として力作ではなかったのです。美しさは認めるにしても、観客という他人の苦痛は考えていない自己中心性がむき出しになっていて、ちょっと辛い作品でした。遠い作品は、やはり全力で作り込んだ力作を見たいのです。

 あまりに多数の作品があるので、誰も全部を見られないという状態ですが、今回、わたくし彦坂尚嘉は、アートスタディーズと建築系ラジオの合同ツアーを、参加者20名を得て、3泊4日で回ったのでした。広大な地域を20名で車4台で回ることは、複雑な行程表を必要として、それは一つのアーキテクチャーであるかのような構造物でありました。何しろ昼食一つをとっても20人規模になると、事前に予約を必要とするわけで、時刻通りにそのレストランに到着するように車を走らせることもやさしい事ではないからです。

そう言う意味でも、こうしたツアーの構築も含めて、全体のアーキテクチャー化を真剣に検討すべき段階になっています。


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symplexus

お疲れさまでした.
何はともあれ無事終了よかったですね.
 こうした見知らぬ山間では,
総勢20名,4台が移動するだけでも一仕事だったのでは?
一台を見失うと連絡は簡単では無いですから.

 道路を中心とした開発思想の行き詰まりは明白なのに,
ここ山梨でもネットワーク化への必然性理解は
 幼稚と言わざるを得ません.
 高齢化の進行が困難を増幅していて,
どこを見ても既存価値観の質的劣化はもとより
 地方コミュニティー崩壊の音が聞こえて来るようです.

越後妻有のアート的実験の検証はその意味でも重要でしょう.
ドキュメンタリーはそれだけでも巨大な意味を持つと考えます.
by symplexus (2009-08-13 15:33) 

丈

本当に御世話になりました。おかげさまでさまざまな勉強をすることが出来ました。これからまた考えなくては行けない宿題もいただいてきました。
by (2009-08-13 16:36) 

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